文音四吟歌仙「糸遊や」の巻清書(縦書)
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いわき市で中学校時代を共に過ごした級友4名がメールで連句の付合を進める「文音歌仙」、その五巻目が先日めでたく満尾を迎えました。その解説はすでに文音四吟歌仙「糸遊や」の巻①~⑤ に掲載しましたが、その清書を、どうやらなんとか使いこなせるようになった縦書き変換スクリプトで仕上げてみました。なおブラウザおよびその設定によっては画面が乱れる場合がありますので、ウィンドウズならば Firefox で、表示を縮小気味にしてご覧になることをお勧めします。

宗海停年退職記念いわき文音四吟歌仙
糸遊や
の巻
 
宗海捌
 
発句
 
糸遊やカメラひとつを道連れに
 
 
 
 
 
遊糸
 
三春
 
 
 
 
軽やかに行く紫雲英
げんげ
咲く原
 
宗海
 
晩春
 
第三
 
風船は子の手離れて空にあり
 
 
 
 
 
 
禿山
 
三春
 
 
 
 
犬と競り合い追うフリスビ
 
 
 
 
 
笑女
 
 
 
 
朝まだき雨戸を繰れば涼新た
 
 
 
 
 
 
 
 
初秋
 
折端
 
 
湖上はるかに有明の月
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
三秋
初裏
 
折立
 
クラス会話は尽きぬ長い夜
 
 
 
 
 
 
 
 
 
三秋
 
 
 
 
瞼に浮かぶ故郷の山
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
世界地図訪ねし町に丸印
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
銅貨ひらりと投げる噴水
 
 
 
 
 
 
 
 
 
三夏
 
 
 
願ひ事叶ひて参る太子堂
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
嫁御の父は涙隠して
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
鴛鴦の契嬉しき島の月
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
三冬
 
 
 
 
網干す浜は人影もなし
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
いにしへの羽衣偲ぶ松林
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
ロラ淡き極北の村
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
十一
 
乙女らは鐘響く野に花やぎて
 
 
 
 
 
 
 
 
 
折端
 
 
春の苺の甘きひと粒
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
三春

名残表
 
折立
 
温室の温みにしばしまどろみぬ
 
 
 
 
 
 
 
三春
 
 
 
 
仔猫相手に飯事
ままごと
の庭
 
 
 
 
 
晩春
 
 
 
小父さんに名を問はるるも恥づかしき
 
 
 
 
 
 
 
 
訪ねし人は引越しの後
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
三回忌彼の好んだ酒を提げ
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
夕焼映す蔵の白壁
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
晩夏
 
 
 
色褪せし暖簾はためく海霧
じり
の町
 
 
 
三夏
 
 
 
 
涙ぐみたる眼
まなこ
いとしき
 
 
 
 
 
 
 
 
発車ベル襟章強く握り締め
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
馬を進むる荒野涯
はて
無き
 
 
 
 
 
 
 
十一
 
月明り肩を落とした影法師
 
 
 
 
 
 
 
 
 
三秋
 
折端
 
 
遠く聞こえる盆踊り唄
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
初秋
名残裏
 
折立
 
掘割の水面
みなも
を叩く赤とんぼ
 
 
 
 
三秋
 
 
 
 
子らが集まる角の駄菓子屋
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
路地裏に夕餉のにほひ漂ひて
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
安らぎ満つる団欒の刻
とき
 
 
 
 
 
 
 
 
 
野良仕事按配をする花盛
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
晩春
 
挙句
 
 
遍路土産の話あれこれ
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
三春
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
起首
 
二〇一〇
〇四
〇六
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
満尾
 
二〇一〇
〇六
二〇



*撮影機材 :PENTAX K-7 +SIGMA17-70mm f2.8-4.5 DC MACRO
とびぃ
連句
0

thema:詩・和歌(短歌・俳句・川柳)など - genre:学問・文化・芸術


ブログ記事縦書きテスト(四訂+追加)
ツィッターのご常連フォロワー @nasumama_kazu さんのご好意により、縦書きWebページプロジェクト(freefielder.jp)制作による「縦書き用スタイルシート」のご紹介にあずかりましたので、早速それを試験的に実行してみました。実験材料は、6月22日にツィッター上で始まった両吟歌仙「寝冷子」の巻の付合です(ブラウザによっては縦書き表示がされなかったり画面が乱れたりすることがあります。FireFox3.x,IE 7,Safari,Opera9.x などでご覧になることをお勧めします)。

【追記】@nasumama_kazu さんのお助けでようやく"毎行下り階段地獄"(笑)から脱出できました。ご教示に感謝いたします m(._.)m

【追記】これに味をしめてもう一巻、6月24日から始まった歌仙「沖縄忌」の巻も追加してみました。(2010.06.26)

 
 
タl両吟歌仙
寝冷子
の巻
 
 
 
 
 
宗海捌
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
起首
 
二〇一〇
〇六
二二
初折表
 
発句
 
寝冷子を抱き寄す夜明けしらじらと
 
 
 
 
水魚
 
三夏
 
 
 
 
梅雨蜩
ひぐらし
の声のかそけさ
 
 
 
宗海
 
仲夏
 
第三
 
絵蝋燭旅の土産に求め来て
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
米酢を垂らすぬた和への鉢
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
月の道分け入る先に庵
いほ
の跡
 
 
 
 
 
 
三秋/月
 
折端
 
 
草の葉末に露重げなる
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
三秋
初折裏
 
折立
 
唐黍
たうきび
の焼くる匂ひに道の駅
 
 
 
 
仲秋
 
 
 
 
釣銭渡す白き指先
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
雑/恋
 
 
 
逢引に薄く残せし爪の形
かた
 
 
 
 
 
 
 
雑/恋
 
 
 
 
音立てて呑む水差しの水
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
アラジンがランプを擦る日暮れ時
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
血潮に染まる蝕の冬月
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
三冬
 
 
 
大灘へ捕鯨船駆る島猟師
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
三冬
 
 
 
 
碧眼のひとパライゾを説く
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
舶来の本に押されし金の箔
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
葉巻燻らす広き革椅子
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
十一
 
楼閣に見やる祗園の花篝
はなかがり
 
 
 
 
晩春
 
折端
 
 
間遠に響く鐘おぼろなり
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
三春

 


 
 

名残折表
 
折立
 
旅に倦みをれば蛙のめかり時
 
 
 
 
 
 
 
 
 
晩春
 
 
 
 
常陸訛りに油商ふ
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
ぞんざいに継ぎの当たりし膝頭
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
大樹の叉
また
に笑ふお転婆
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
船玉の淵に河童が出るさうな
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
揺るるボ
トに歌ふロ
レライ
 
 
 
 
 
 
 
三夏
 
 
 
低空を掠め去り行く戦闘機
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 




 
 
タl乱吟歌仙
沖縄忌
の巻
 
 
 
 
 
宗海捌
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
起首
 
二〇一〇
〇六
二四
初折表
 
発句
 
おうな
泣く少女のやうに沖縄忌
 
 
水魚
 
仲夏
 
 
 
 
潮の香りを運ぶ白南風
しらはえ
 
 
宗海
 
仲夏
 
第三
 
竹籠を天秤棒に吊り下げて
 
 
 
 
 
 
 
氷心
 
 
 
 
 
小銭並ぶる厚き手のひら
 
 
 
 
 
 
 
松翠
 
 
 
 
プレゼンを仕上げた空に月の舟
 
 
 
 
 
凪海
 
三秋
 
折端
 
 
板塀越しに覗く大菊
 
 
 
 
 
 
 
 
 
玄碩
 
晩秋
 
折立
 
ご内儀の秋刀魚盗らるる猫長屋
 
 
 
 
 
水魚
 
晩秋
 
 
 
 
出勤前にゴミの分別
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
長年の独り暮らしに灯が点り
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
しみもほくろもチ
ムポイント
 
 
 
 
 


とびぃ
連句
7

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文音四吟歌仙「糸遊や」の巻⑤ (挙句まで)
IMGP3011-1.jpg

名残裏に入った一巻は次のように付け進められました。

 発句 糸遊やカメラひとつを道連れに     遊糸
 脇   軽やかに行く紫雲英咲く原      宗海
 第三 風船は子の手離れて空にあり      禿山
 四   犬と競り合ひ追ふフリスビー     笑女
 五  朝まだき雨戸を繰れば涼新た       海
 折端  湖上はるかに有明の月         糸

 折立 クラス会話は尽きぬ長い夜        笑
 二   瞼に浮かぶ故郷の山          山
 三  世界地図訪ねし町に丸印         糸
 四   銅貨ひらりと投げる噴水        海
 五  願ひ事叶ひて参る太子堂         山
 六   嫁御の父は涙隠して          笑
 七  鴛鴦の契嬉しき島の月          海
 八   網干す浜は人影もなし         糸
 九  いにしへの羽衣偲ぶ松林         笑
 十   オーロラ淡き極北の村         山
 十一 乙女らは鐘響く野に花やぎて       糸
 折端  春の苺の甘きひと粒          海
名残表
 折立  温室の温みにしばしまどろみぬ     山
 二   仔猫相手に飯事(ままごと)の庭     笑
 三  小父さんに名を問はるるも恥づかしき   海
 四   訪ねし人は引越しの後         糸
 五  三回忌彼の好んだ酒を提げ        笑
 六   夕焼映す蔵の白壁           山
 七  色褪せし暖簾はためく海霧(じり)の町  糸
 八   涙ぐみたる眼(まなこ)いとしき    海
 九  発車ベル襟章強く握り締め        山
 十   馬を進むる荒野涯(はて)無き     海
 十一 月明かり肩を落とした影法師       笑
 折端  遠く聞こえる盆踊り唄         糸
名残裏
 折立 掘割の水面(みなも)を叩く赤とんぼ   山
 二   子らが集まる角の駄菓子屋       笑
 三  路地裏に夕餉のにほひ漂ひて       糸
 四   安らぎ満つる団欒の刻(とき)     海
 五  野良仕事按配をする花盛         山
 挙句  遍路土産の話あれこれ         笑


 折端  遠く聞こえる盆踊り唄         糸 初秋
名残裏
 折立 掘割の水面(みなも)を叩く赤とんぼ   山 三秋

付合は名残裏に入りました。
折立は、二句続いた秋季を受けて秋をもう一句続けます。夜分の世界を描いた前二句から日中の場景に転じました。「盆踊り唄」は前句の盆踊りの場ではなくて、練習などで流されているものに見立て替えがなされています。そんな場にふさわしい場所として「掘割」が選ばれました。

 二   子らが集まる角の駄菓子屋       笑 雑

二句目は、前句の「赤とんぼ」を付所に子供たちの世界へと転じています。場景を詠んだ前句に人間を詠んだ人情句を配して変化を図ったものです。

 三  路地裏に夕餉のにほひ漂ひて       糸 雑

三句目は、前句にふさわしい場所を路地裏と見定めたもの。前の名残表七句目と同じく「其場(そのば)」の付けの手法が用いられています。

 四   安らぎ満つる団欒の刻(とき)     海 雑

四句目は前句の「夕餉」から一家団欒の場面を思い描きました。いささか前句の続きを言っている趣で、付き過ぎの嫌いがあります。前句の続きを詠んだりするとこのような難に陥りやすいので注意が必要です。

 五  野良仕事按配をする花盛         山 晩春/花

五句目は一巻の眼目となる花の座。正式(しょうしき)俳諧ではここで香を焚いてよい花の句が詠まれるようにと祈願するところから「匂いの花」とも呼ばれます。花句は花全般への賞翫の心を込めて単に「花」とだけ詠めばよく、「菊の花」のように品種を特定したものは「非正花」として、正式の花句の扱いは受けられません。ここでは前句から農家の生活を思い浮かべ、農事を花に配したものです。

 挙句  遍路土産の話あれこれ         笑 三春

付合も終局を迎え、いよいよ挙句。あっさりとめでたく詠むのがよいとされる句所です。晩春の「花」を受けて三春の季語「遍路」を配したもの。道筋で見聞きした土産話をゆっくりと聞くのどかな気分でめでたく一巻が閉じられました。
とびぃ
連句
0

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ツィッター連句の試み⑥ -作品紹介3-
IMGP3034.jpg

@kougyoku55 さんとの自由連句の付合もまた「今日の季語」がきっかけとなって始まったものです。

4月19日にツィートした「今日の季語」の季題は「山笑う」。その記事のリツィートに、これを用いた句が添えられていました。
@kougyoku55 麓からくすぐられたか山笑う RT @twryossy 【今日の季語】山笑ふ(やまわらう):「笑ふ山」とも。新芽や木の花に包まれた低山の姿を笑顔に見立てた季語。中国北宋の画家郭熙(かくき)が四季の山を形容した文章に典拠を持つ。 #jhaiku #kigo
posted at 22:34:06

そこで翌朝さっそくこれにお返しの付句を。
@twryossy RTありがとうございます。こんな付句ができましたw ;痒いところを探す早蕨(さわらび) RT @kougyoku55: 麓からくすぐられたか山笑う RT @twryossy【今日の季語】山笑ふ(やまわらう):… #jhaiku #kigo #jrenku
posted at 04:40:36

これに応えて再び @kougyoku55 さんから付句が返ってくる。こうして付句の応酬が始まりました。
@kougyoku55 見よう見まねで私も ; 灰汁を抜く手間もまた好し鄙の宴 RT @twryossy 痒いところを探す早蕨(さわらび) RT @kougyoku55: 麓からくすぐられたか山笑う RT @twryossy【今日の季語】山笑ふ #jhaiku #kigo #jrenku
posted at 13:08:33

@twryossy ようこそ連句の小部屋へ: 刺身にしても美味き竹の子 RT @kougyoku55 灰汁を抜く手間もまた好し鄙の宴 RT @twryossy 痒いところを探す早蕨(さわらび) RT @kougyoku55: 麓からくすぐられたか山笑う #jrenku
posted at 13:53:42

@kougyoku55 連句の小部屋、恐る恐る足を踏み入れてみます : ぱんぱんと木の芽たたけば燗もつく @twryossy 刺身にしても美味き竹の子 RT @kougyoku55 灰汁を抜く手間もまた好し鄙の宴 RT @twryossy 痒いところを探す早蕨(さわらび) #jrenku
posted at 15:05:52

こんな具合に始まった付合の巻首の一部をご披露します。
01 麓からくすぐられたか山笑う     松翠
02  痒いところを探す早蕨(さわらび)  宗海
03 灰汁を抜く手間もまた好し鄙の宴    翠
04  刺身にしても美味き竹の子      海
05 ぱんぱんと木の芽たたけば燗もつく   翠
06  鳥の運んだ種を育てる        海
07 憧れは葉陰を映す心字池        翠
08  雲流れ行くビルの屋上        海
09 昼休み歓声ひびくバドミントン     翠
10  転校生は左利きなり         海
11 癖のある文字になぜだかときめいて   翠
12  差出人は覚え無き人         海
13 手がかりはオードトワレの懐かしさ   翠
14  暖炉の傍に残るハンカチ       海
15 お飾りといえども薪は桜の枝      翠
16  夜の舞台に通う春風         海
17 喝采は止まず揺らめく花篝       翠
18  異邦の友と歩む川端         海
19 上気して身振り手振りもにぎやかに   翠
20  ガイド見習い今日は本番       海
21 名物を食す流儀も抜かりなく      翠
22  困った時の旅頼みなり        海
23 目についた鳥居すべてを拝み行く    翠
24  丘の上まで続く石段         海
25 太ももが悲鳴を上げるうさぎ跳び    翠
26  起床朝五時浜の民宿         海
27 釣り人はとうの昔に場所を取り     翠
28  誰にも言えぬ沢の入口        海
29 自転車はわざと遠くに置いてきた    翠
30  制服着替えて行く映画館       海
31 楽しみはホットドッグとコカコーラ   翠
32  味噌汁好きが顔を顰(しか)める    海
33 詰め物がとれて傾くパイプ椅子     翠
34  公民館に支持者集まる        海
35 如才なくお国なまりも滑らかに     翠
36  振り込め詐欺が告げる番号      海
37 メモを取るふりで描くはドラえもん   翠
38  午後の講義は論理学なり       海
39 朗々と悦に入りたる独壇場       翠
40  我が嫡流は清和源氏ぞ        海
41 こだわりのポケットチーフで虚勢張る  翠
42  への字ばかりの記念撮影       海
43 出花なら笑窪も高く売れように     翠
44  重たき琵琶やフラの腰付き      海
45 遊び女は技巧凝らして頽れる      翠
46  切れ長の眼が送る流し目       海
47 壁一面タペストリーは重たげに     翠
48  狩に出で立つ王の凛々しさ      海
49 天幕の下で煮出した紅茶飲む      翠
50  夏山縦走三日目に入る        海

 (以下省略)

この両吟自由連句の付合はひと月半ほど続いた後、新たに式目に則った両吟歌仙に受け継がれました。 (この項続く)

*撮影機材 :PENTAX K-7 +SIGMA17-70mm f2.8-4.5 DC MACRO
とびぃ
連句
0

thema:詩・和歌(短歌・俳句・川柳)など - genre:学問・文化・芸術


ツィッター連句の試み⑤ -作品紹介2-
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昨日紹介した「今日の季語」を端緒に始まった付合の一つを、次にご披露しましょう。

本年4月4日にツィートした「今日の季語」は次のようなものでした。
【今日の季語】青麦(あおむぎ):「麦青む」の動詞形も。冬の厳しい寒さを凌いで春を迎えた麦はみずみずしい若葉を育てて畑一面を緑に彩り、やがては豊かな穂を実らせることであろう。◆青麦や湯のかをりする子を抱いて (森 澄雄) #jhaiku #kigo
posted at 04:53:23

末尾の #jhaiku と #kigo は、前々回に取り上げたハッシュタグの一例。俳句と季語に関する検索に対応させるためのものです。

これをツィートすると間もなく、これに応えて、すでに何度かやりとりのあった @Asmin_R さんが次のようなツィートを送ってくださいました。
@Asmin_R @twryossy おはようございます。一句作りました。旅立ちの荷まとまりて麦青む #jhaiku【今日の季語】青麦(あおむぎ)、麦青む
posted at 07:24:25

そこで私がこれに付句で応え、そこから自由連句の付合が始まりました。
@twryossy おはようございます。素敵です。「荷」の後に何か助詞は? RT @Asmin_R: @twryossy おはようございます。一句作りました。旅立ちの荷まとまりて麦青む #jhaiku【今日の季語】青麦(あおむぎ)、麦青む・・・
posted at 07:27:20

@Asmin_R @twryossy コメントありがとうございます。「荷はまとまりて」ですね。:旅たちの荷はまとまりて麦青む #jhaiku
posted at 12:47:15


@twryossy 旅の行く手と麦の生育の過程がオーバーラップして効果を挙げていますね。付句:鉄路の彼方燃ゆるかぎろひ RT @Asmin_R: @twryossy コメントありがとうございます。「荷はまとまりて」ですね。:旅たちの荷はまとまりて麦青む #jhaiku
posted at 13:13:18

「今日の季語」がきっかけになってこのような展開で始まった自由連句の付合は、さらに次々と進められて行きました。その巻首の一部を引用しましょう。

01 旅立ちの荷はまとまりて麦青む     紫葉
02  鉄路の彼方燃ゆるかぎろひ      宗海
03 春泥の停車駅には人もなし        葉
04  降るがごとくに満天の星        海
05 屋根のなき駅舎に一人春の空       葉
06  打ち棄てられて臥せる人形       海
07 鶴引きて表札消えし門の前        葉
08  パワーショベルの唸る昼過ぎ      海
09 主なき家を辛夷は見下ろして       葉
10  心細げに豆腐屋の笛          海
11 家路へと子らは駈けゆく春の夕      葉
12  光ほのかに点る雪洞(ぼんぼり)    海
13 障子戸の奥にゆかしき影二つ       葉
14  髪をまさぐる指やはらかに       海
15 花衣畳の上に流れ落つ          葉
16  瞼に残る夜桜の艶           海
17 桟橋を渡る途中に汽笛鳴り        葉
18  尽きぬ別れを惜しむ客船        海
19 東風吹きて去りゆく人の目は潤み     葉
20  去年(こぞ)の匂ひを梅は忘れず    海
21 木戸閉まり人の出入りは絶えるとも    葉
22  闇に気高き熊本の城          海
23 武士(もののふ)の魂花と並びをり    葉
24  思ひは波濤の先を越え行く       海
25 春疾風朝日に染まる雲を駆る       葉
26  並ぶ僚機に送る挨拶          海
27 足下に蒲公英一つ空を見て        葉
28  居合稽古は楠を相手に         海
29 若武者の声は若葉をとよめかす      葉
30  狐狸妖怪が出るといふ辻        海
31 春宵の逢魔が時に影一つ         葉
32  仇な夜鷹の送る流し目         海
33 恋猫の通ふ路地まで下駄鳴らし      葉
34  小声で歌ふ神田川なり         海
35 春雨も一人で濡れる道なれば       葉
36  竹藪伝ひくぐる山門          海
37 墨染めの袖は黄砂を振り払ひ       葉
38  面壁九年祖師懐かしく         海
39 客人(まらうと)を迎えて門に蛙坐し   葉
40  池の波紋はすでに収まる        海
41 春風は裾翻し北へ抜け          葉
42  岸離れんと軋(きし)む流氷       海
43 鬩ぎ合ふ力の軌跡遙かなり        葉
44  宇宙船より届く中継          海
45 春の気は軌道を巡る波となり       葉
46  片割れ月がひそと微笑む        海
47 菜の花の切手に託し無事祈る       葉
48  今朝開け放つ病室の窓         海
49 春陽射し微笑む白衣は脈をとり      葉
50  たどたどしくも純な日本語       海

(以下省略)


この付合はその後ふた月近くも続いた後、式目に従って行われる歌仙に切り替えられましたが、まことに楽しい体験でした。その付合の中でいちばん印象に残っている行(くだり)を最後に紹介します。

57 墓守りは代替はりして春暮れる      葉
58  夜毎の夢に血塗られし牙        海
59 憧(あくが)ればヴァンパイアなり受難節 葉
60  焚刑にして喰らふ大蒜(おおびる)    海
61 明晩はキスを覚悟のデートでも      葉
62  勝負服には紅の薔薇          海


(この項続く)

*撮影機材 :PENTAX K-7 +SIGMA17-70mm f2.8-4.5 DC MACRO
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ツィッター連句の試み④ -「今日の季語」のこと-
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ツィッター上では、連句興行と併行して、毎朝「今日の季語」という短い歳時記を連載しています。

この試みを始めたのは、私がツィッターに参加して間もない昨年12月29日のことで、それ以来今日まで一日も休まずに続いています。1回分のツィートには140字という制約がありますが、例句を含めて解説をその範囲にうまく収める工夫をめぐらすところに、連句や俳句のような定型作品を詠むに似た興趣を覚えさせるものがあり、回を重ねるごとに面白みが増して飽きることがありません。

当初はツィッター上に軽い読み物を提供するくらいのつもりだったのですが、続けて行く中に、楽しみに待っていて下さる方々からのメッセージが届くようになったり、自らのアカウントから他者の発言を引用する形で発信し拡散するリツィート(略号:RT)をして下さる方々が次第に数を増すようにもなってきました。

さらにまた、俳句に関心をお持ちの方々が、その日取り上げた季語を用いて詠んだ句を披露して下さることも多くなり、それらのあれこれを励みに毎日の連載を続けています。

その「今日の季語」をまとめてブログにアップしたいと願いながら、連句の付合に忙しくていまだに果たせずにいます。しかし、いずれ項を改めて発表するつもりですのでお待ちください。 (この項続く)

*撮影機材 :PENTAX K-7 +SIGMA17-70mm f2.8-4.5 DC MACRO
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ツィッター連句の試み③ -作品紹介1-
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ツィッター上で連句を巻くことになったそもそもの始まりは、私が勤務していた大学の卒業生S氏とのやりとりにあります。近世文学を専攻して江戸俳諧に多大の関心を持つ氏とは、それまでにもブログのコメント欄を通じて臨時的な長短句の付合をしたことがありましたが、新たにツィッターを通じてメッセージのやりとりをする間に、いつの間にかそれが恒例のようになって、自由形式による付合が始まりました。その一端をご紹介します。

01 ページ繰る指(および)に春の寒さかな  宗海
02 打ち損じたる反故の溢れて        一生
03 催促の速達届く午後の窓          海
04 銚釐(ちろり)を前に先ずひと思案     生
05 文音は名残裏にさしかかり         海
06 ここぞとばかり続く競り合ひ        生
07 庭先の枝に輪切りの蜜柑刺し        海
08 祭の後に鳴らす嘴             生
09 鉄の字を勲章にする天狗連         海
10 問はず語りにこぼさるる笑み        生
11 何庵の暖簾をくぐる路地の奥        海
12 カラン睨みてよき茹で具合         生
13 彫りかけの酒呑童子が皺の中        海
14 頼光綱と浮かばぬ二人           生
15 堀端で袂に入れる石を選り         海
16 臥するよりもと晋の王祥          生
17 看板は親譲りなる無鉄砲          海
18 俤映る硝子戸の中             生
19 寒燈に香を焚かんと燐寸擦る        海
20 さてそろそろと出す緋毛氈         生
21 気短の舅に届く花便り           海
22 干鮭噛みて指図百遍            生
23 気にくわぬ奴は出場停止なり        海
24 役か役者かわからぬ不足          生
25 今日もまた門前雀羅芝居小屋        海
26 髀肉の嘆に下足番泣く           生
27 貧相な魚体が沈む泥鰌汁          海
28 手際の良さの知れる笹掻き         生
29 弘法は筆を選ばず春の雨          海
30 お忘れ物と届く錫杖            生
31 この国もいまだ捨てたるものでなし     海
32 折る指の増す天下一品           生
33 名の知らぬ肴多きは果報なり        海
34 仕上げに戻る例の一軒           生
35 門外に出るを許さじ煮込味         海
36 此処にもありや桃花源記          生
37 切り通し越ゆれば届く鐘の声        海
38 蹌踉めきつつも単騎還りて         生
39 我慢して待ちし甲斐あり大三元       海
40 まあ色々と照れに和む座          生
41 浅黒き異国の嫁を背に隠し         海
42 国は違えど魚醤は魚醤           生
43 船が着くより匂うなり波浮港        海
44 椿油を流す海つ路             生
45 薙刀をからりと捨てて仁王立ち       海
46 金剛力は生来と知れ            生
47 必殺のコプラツイストほどきかね      海
48 巻きつかれつつ吹きまくる笛        生
49 うっかりとやり忘れたる朝の餌       海
50 高楊枝など告ぐる術無し          生

 (以下省略)

実際の付合はこんな具合に運ばれました。

昨日は研究室の片付けに終日追われて返事が遅れました。付句 →催促の速達届く午後の窓 RT @ISSYOUISSYOU: @twryossy おはようございます。ページ繰る指に春の寒さかな打ち損じたる反故の溢れて

研究室ほぼ片付いたので、気を許して今日も在宅。期限までには無事"無血開城"の運びとなる見通しが立ちました。 付句→門外に出るを許さじ煮込味 RT @ISSYOUISSYOU: 仕上げに戻る例の一軒

来週からぽつぽつと職場の送別会が始まる。火曜日にはその嚆矢が… 付句→必殺のコプラツイストほどきかね RT @ISSYOUISSYOU: 金剛力は生来と知れ

メッセージが主体で、その後に相手から届いた前句と、それに付ける句を記す形式で運ばれるもので、付合そのものは添え物という趣で進められました。現在は氏がご多忙の様子でここしばらく中断しているのが残念ですが…。 (この項続く)

*撮影機材 :PENTAX K-7 +SIGMA17-70mm f2.8-4.5 DC MACRO
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ツィッター連句の試み② -ハッシュタグのこと-
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特定のテーマに関連する記事をひとまとめにして表示するためには、記事の中にハッシュタグと呼ばれる検索用の目印となる文字列を含めておく必要があります。

これは利用者が自由に設定できるもので、頭に半角文字の # を置き、その後に任意の文字列を付け加えればそれで出来上がり。例えば、その記事が連句に関連するものであることを示すのに、私は #jrenku というハッシュタグを用いています。

このタグを対象に検索の設定をすれば、連句に関連した記事だけを集めたコラムを形成することができます。ツィッター用に作られたウェブアプリは、かならずと言ってよいほどこのような機能を備えています。

当初はそのような便利な機能を使わずに、数人の方々と自由連句を試みていたのですが、それだと他の記事に紛れて見落とすおそれがあります。そこでこれを導入してみたところ、そのようなこともなくなり、使い勝手もぐんとよくなりました。現在では #jrenku の後にさらに巻ごとのタグを加えて、各巻を識別するのに利用しています。

そのような試みによって巻かれた連句作品を次にご紹介しましょう。 (この項続く)

*撮影機材 :PENTAX K-7 +SIGMA17-70mm f2.8-4.5 DC MACRO
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ツィッター連句の試み① -ツィッターのこと-
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目下ツィッター上で数巻同時進行による連句の付合が進められています。その興行の進め方とここから生まれた作品のいくつかを紹介します。

ツィッターは「つぶやき」と和訳されたところから、独り言をつぶやくシステムであるかのように考えられているふしがあります。しかし、実際はそんな閉ざされたものではありません。これはゆるい繋がりを持つ特定の(場合によっては不特定の)方々に、同時にメッセージを配送する、ネット上に開かれたコミュニケーションの道具なのです。

ツィッターは、ネット上からアクセスして自分のアカウントを登録し、ホームと呼ばれる自分専用の読み書きのためのサイトを持つところから始まります。当然ながら、パソコンやiPhone などのようなインターネットに接続できる機器が必要です。またウェブにアクセスするためのアプリケーションソフト(ウェブアプリ)も。これはネット上から手に入れることができます。

ホームに記事を書き込むことをツィートと呼び、ツィートされたコメントが時間を追って表示される画面をタイトルライン(以後、略号:TL)と称します。

ホームの画面はツィッター利用者ごとに異なります。それはなぜかというと、TL画面には基本的に利用者がフォローした人の記事しか表示されないからです(但し、検索をかけた場合などはこの限りではありません)。

TL画面は、何も手を加えないままならば、フォローした人々の発信した記事が時間を追って雑然と流れてゆくだけです。それがツィッター本来の姿なのですが、その中から自分が興味を抱く特定の発信者やなんらかのテーマに的を絞って検索表示させることもできます。 (この項続く)

※参考※ ツィッターへの参加方法などについては こちらのページ をご覧下さい。
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文音四吟歌仙「糸遊や」の巻④ (名残表折端まで)
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名残表後半にさしかかった一巻は次のように付け進められました。

 発句 糸遊やカメラひとつを道連れに     遊糸
 脇   軽やかに行く紫雲英咲く原      宗海
 第三 風船は子の手離れて空にあり      禿山
 四   犬と競り合ひ追ふフリスビー     笑女
 五  朝まだき雨戸を繰れば涼新た       海
 折端  湖上はるかに有明の月         糸

 折立 クラス会話は尽きぬ長い夜        笑
 二   瞼に浮かぶ故郷の山          山
 三  世界地図訪ねし町に丸印         糸
 四   銅貨ひらりと投げる噴水        海
 五  願ひ事叶ひて参る太子堂         山
 六   嫁御の父は涙隠して          笑
 七  鴛鴦の契嬉しき島の月          海
 八   網干す浜は人影もなし         糸
 九  いにしへの羽衣偲ぶ松林         笑
 十   オーロラ淡き極北の村         山
 十一 乙女らは鐘響く野に花やぎて       糸
 折端  春の苺の甘きひと粒          海
名残表
 折立  温室の温みにしばしまどろみぬ     山
 二   仔猫相手に飯事(ままごと)の庭     笑
 三  小父さんに名を問はるるも恥づかしき   海
 四   訪ねし人は引越しの後         糸
 五  三回忌彼の好んだ酒を提げ        笑
 六   夕焼映す蔵の白壁           山
 七  色褪せし暖簾はためく海霧(じり)の町  糸
 八   涙ぐみたる眼(まなこ)いとしき    海
 九  発車ベル襟章強く握り締め        山
 十   馬を進むる荒野涯(はて)無き     海
 十一 月明かり肩を落とした影法師       笑
 折端  遠く聞こえる盆踊り唄         糸


 六   夕焼映す蔵の白壁           山
 七  色褪せし暖簾はためく海霧(じり)の町  糸 三夏

七句目は前句と同季の夏。前句の蔵のある風景がどのような場所なのか、さらに踏み込んだ描写をしています。このように前句の場景を手がかりにする付け方を「其場(そのば)」の付けといいます。

 八   涙ぐみたる眼(まなこ)いとしき    海 雑/恋

八句目、いきなり恋句が飛び出した印象ですが、前句の古寂びた町に似つかわしい恋の場面を探り当てたもの。歌仙では一巻に二度は必ず恋を出すものとされ、恋句のない作は情趣のないものとして貶(おとし)められます。

 九  発車ベル襟章強く握り締め        山 雑/恋

九句目は前句を軍人などの恋人との別れの場面と見定めたもの。恋句は一句で捨てずに二句は続けることとされます。また本句のように前句と一体になって恋句となる句は「恋離れ」と呼ばれます。


 十   馬を進むる荒野涯(はて)無き     海 雑

十句目、前句の人物を馬に乗って荒野を進む場面へと移し替えました。映画のオーバーラップの手法に似た場面転換の面白さがあります。

 十一 月明かり肩を落とした影法師       笑 三秋/月

十一句目は、前句の人物をさらに夜の場面へと導いて、寒々とした場景を一段と強調しています。状況は異なりますが、映画「シェーン」の別れの場面が下地にあるように見えます。

 折端  遠く聞こえる盆踊り唄         糸 初秋 

名残表の折端では、前句までに描かれた世界を引きずらないように、月夜の場面を盆踊り唄の流れるまったく別の空間へと場面転換を図っています。連句では打越・前句・付句が同じ場面や雰囲気がもたれ気味に続くことを「三句がらみ」と称して嫌います。これに陥らないためには、付句は前句の説明に終わらずに常に飛躍を目指さなければなりません。 (この項続く)

*撮影機材 :PENTAX K-7 +SIGMA17-70mm f2.8-4.5 DC MACRO
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文音四吟歌仙「糸遊や」の巻④ (名残表六句目まで)
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名残表に入った一巻は次のように付け進められました。

 発句 糸遊やカメラひとつを道連れに     遊糸
 脇   軽やかに行く紫雲英咲く原      宗海
 第三 風船は子の手離れて空にあり      禿山
 四   犬と競り合ひ追ふフリスビー     笑女
 五  朝まだき雨戸を繰れば涼新た       海
 折端  湖上はるかに有明の月         糸

 折立 クラス会話は尽きぬ長い夜        笑
 二   瞼に浮かぶ故郷の山          山
 三  世界地図訪ねし町に丸印         糸
 四   銅貨ひらりと投げる噴水        海
 五  願ひ事叶ひて参る太子堂         山
 六   嫁御の父は涙隠して          笑
 七  鴛鴦の契嬉しき島の月          海
 八   網干す浜は人影もなし         糸
 九  いにしへの羽衣偲ぶ松林         笑
 十   オーロラ淡き極北の村         山
 十一 乙女らは鐘響く野に花やぎて       糸
 折端  春の苺の甘きひと粒          海
名残表
 折立 温室の温みにしばしまどろみぬ      山
 二   仔猫相手に飯事(ままごと)の庭     笑
 三  小父さんに名を問はるるも恥づかしき   海
 四   訪ねし人は引越しの後         糸
 五  三回忌彼の好んだ酒を提げ        笑
 六   夕焼映す蔵の白壁           山


 折端  春の苺の甘きひと粒          海
名残表
 折立 温室の温みにしばしまどろみぬ      山 三春

これより名残の折。表の折立は前二句を受けて春をもう一句続けます。前句の「苺」に素直に付けたもの。暖かな春の温みが伝わってきます。

 二   仔猫相手に飯事(ままごと)の庭     笑 晩春

春が三句続いたので、二句目は無季の句に。前句に相対する形でままごと遊びに興ずる幼女の姿が描かれています。

 三  小父さんに名を問はるるも恥づかしき   海 雑

三句目は、その幼女の立場に立って、そこから別の事柄を引き出しました。このような付け方は「其人(そのひと)」と呼ばれるものです。

 四   訪ねし人は引越しの後         糸 雑

四句目は、前句の「問はるる」を付所として、住所を尋ねながら知り合いを探し求める人物の姿に転じています。

 五  三回忌彼の好んだ酒を提げ        笑 雑

五句目、前句を受けて今度はさらに前二句とは異なる状況を描いたもの。同じ前句を共有しながらも、三・四句と四・五句の構築する世界が異なるものである点が、連句の付合の面白いところです。

 六   夕焼映す蔵の白壁           山 晩夏

六句目は、ここまでしばらく人事が続いて、付合の流れがいささか重たくなってきたので、それを場景句でさらりと流したもの。このような付け方も一巻の運びに変化をもたらすのに必要なものです。 (この項続く)

*撮影機材 :PENTAX K-7 +SIGMA17-70mm f2.8-4.5 DC MACRO
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文音四吟歌仙「糸遊や」の巻③ (初裏折端まで)
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初折裏に入った一巻は次のように付け進められました。

 発句 糸遊やカメラひとつを道連れに     遊糸
 脇   軽やかに行く紫雲英咲く原      宗海
 第三 風船は子の手離れて空にあり      禿山
 四   犬と競り合ひ追ふフリスビー     笑女
 五  朝まだき雨戸を繰れば涼新た       海
 折端  湖上はるかに有明の月         糸

 折立 クラス会話は尽きぬ長い夜        笑
 二   瞼に浮かぶ故郷の山          山
 三  世界地図訪ねし町に丸印         糸
 四   銅貨ひらりと投げる噴水        海
 五  願ひ事叶ひて参る太子堂         山
 六   嫁御の父は涙隠して          笑
 七  鴛鴦の契嬉しき島の月          海
 八   網干す浜は人影もなし         糸
 九  いにしへの羽衣偲ぶ松林         笑
 十   オーロラ淡き極北の村         山
 十一 乙女らは鐘響く野に花やぎて       糸
 折端  春の苺の甘きひと粒          海


 六   嫁御の父は涙隠して          笑
 七  鴛鴦の契嬉しき島の月          海 三冬/月/恋

七句目は月の座。ここと定まっているわけではないのですが、初折の裏ではこのあたりに月を出すことが多い。また月三座の中、一つは秋以外の夏か冬にするのも変化を持たせるのに有効です。ここでは三冬の季語オシドリを指す「鴛鴦(えんおう)」を、夫婦の約束を指す慣用句「鴛鴦(えんおう)の契(ちぎり)」の形で用い、前句の婚礼を承ける恋句に仕立てました。

 八   網干す浜は人影もなし         糸 雑

前句の「島」の場景を補足する描写句で、穏やかなあしらいがうまく効いています。

 九  いにしへの羽衣偲ぶ松林         笑 雑

本句も前句を承けて「網干す浜」から天の羽衣伝説を思い浮かべたものです。

 十   オーロラ淡き極北の村         山 雑

前句の「羽衣」から今度は「オーロラ」へと連想をはたらかせたもの。日本から外国へ舞台がぐるりと回ったところにも転じの面白さを感じます。

 十一 乙女らは鐘響く野に花やぎて       糸 雑/花

十一句目は花の座。ところが迂闊なことに、打越に同じ植物の「松林」が出ていたことに気付いたものの、すでに後の祭。これではこの句所で花を詠むことはできません。月の句ならばともかく、花の句をこぼす(後送りにする)ことはよろしくないとされている。そこで窮余の一策として、ここは「花」字を持ちながら植物ではない「雑の正花(ぞうのしょうか)」を用いた花句で行くことにしました。

そのような目論見を付番の糸さんにご披露したところ「花やぐ」を用いた候補句が提出され、多少手直しの後、掲句の形で治定。

 折端   春の苺の甘きひと粒         海 三春

初折もようやく折端に。前句の雑の花を受けて、改めて春の季を続けることになります。 (この項続く)

今日の画像は先日の帰省の折に、ツィッター上で知り合った地元のまゆさんに案内して頂いたいわき市フラワーセンターで撮影したもの。しばらくこのシリーズを続けます。

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