いわき文音五吟歌仙『赤蜻蛉』の巻 解題04(名残折表折立から六句目まで)
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※画像はブログ「一日一豆」より転載


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  いわき文音五吟歌仙「赤蜻蛉」の巻          宗海捌
                        起首 2015.09.18
                        満尾 2015.12.13


 発句 赤蜻蛉載せて運ぶや坊主持ち      俊輔 三秋
 脇   金木犀の香る畦道          宗海 仲秋
 第三 宵の月鎖(さ)せる坑口照らすらん    禿山 三秋/月
 四   娘足長祖母は胴長          笑女 雑
 五  五十肩ハウツー本をかき集め      遊糸 雑
 折端  寒稽古にも追掛けがいる        海 晩冬
初裏
 折立 影冴ゆる八甲田山音もなく        輔 三冬
 二   風化してなお道祖双体         女 雑
 三  くねくねと横座りする膝の上       山 雑/恋
 四   しごきほどけて闇は深まり       糸 雑/恋
 五  蓋開けて卵を落とす泥鰌鍋        輔 三夏
 六   泡盛酌めば昇る夕月          海 三夏/月
 七  黍畑塩吹く頬を手で拭い         山 雑
 八   湿布貼るにも器用不器用        女 雑
 九  接着の技術は今やロケットに       糸 雑
 十   金の筋目の細き志野焼         海 雑
 十一 三斎が利休見送る花明かり        輔 晩春/花
 折端  出窓開けば胡蝶飛び立つ        女 三春
名残表
 折立 漸くに炬燵を塞ぐ模様替え        山 晩春
 二   夫(つま)と眼鏡を探す半日       糸 雑
 三  タイマーに頼る薬の飲み忘れ       海 雑
 四   湯気ほっこりとゆめぴりか盛る     輔 雑
 五  七五三集へる人の賑やかに        女 初冬
 六   鎮守の森に潜むふくろう        山 三冬

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名残表
 折立 漸くに炬燵を塞ぐ模様替え        山 晩春


膝送りは早くも後半にさしかかり、これより名残折の表入り。折立はお待ち兼ね五飛び遅番禿山氏の担当。式目の「句数」の定めに従って春をもう一句続けます。春三期のいずれも可、人情の有無は問いません。

呈示された候補の中から一次選考に残ったのは次の一句。
  好天に炬燵を塞ぎ模様替え
式目への差合はなく、穏やかに前句の内容を承けてはいますが、室内描写をそのまま引き継いでいる点と、「出窓開く」から「好天に炬燵を塞ぎ」と運んだところに続きを言っている印象が残ります。上五を「好天に」と言わずに、前句からの続きを阻む要素となる詞を交えてその難から逃れたいところです。また「塞ぎ」の中止形にも説明の匂いがします。

これらの点に一直を加えて掲句の形に改めました。中七を中止形ではなく連体形にしたことと、上五に《やっと腰を上げた》という要素を加えて改善を図ったものです。前句を模様替え最中の場景と見立ててこれに穏やかに応じた折立句が生まれました。

 二   夫(つま)と眼鏡を探す半日       糸 雑


二句目は遊糸さんに付番が回って来ました。春が三句続いて句数の制約が解けたので雑に戻ります。初裏折端、名残表折立と「人情自」句が二つ続いたので、人情を続けるならば他または自他半、さもなければ人情無しで運ぶことになります。

遊糸さんから呈示された候補5句には句材に関する障りはないのですが、いずれも人情自と見なされる句なので、同じ人情が三句続いてしまう難があります。そこで次の候補句に一直を加えてその難を解消することにしました。
  あれこれ探す物の置き場所
本句の「あれこれ探す」をもっと具体化させて、付筋を前句の「模様替え」の際に何かをどこかに置き忘れたという内容に改め、さらに人情他の要素を加えるという方針に沿った上掲句案を呈示してご納受頂きました。これによって初案に具体性が加わって付味の良い二句目が生まれました。

 三  タイマーに頼る薬の飲み忘れ       海 雑


これに早速三句目付番の捌が付けさせて頂きます。前句の二人でどこかに置き忘れた眼鏡を探す情景から、物忘れを意味する《廃忘(はいもう)》の要素を探り出し、これを「薬」の飲み忘れという病体の句材に転じ、併せてさらに「タイマー」を加えて曲を添えたもの。老体の要素もほの見えています。

 四   湯気ほっこりとゆめぴりか盛る     輔 雑


次は四飛び早番信輔氏の付番。さらに雑を続けます。人情に関しては打越と同類の「人情自他半」句にならないように注意する必要があります。

呈示された候補5句の中で目を留めたのは次の一句。
  白い湯気出すゆめひかり
前句への付心は《飲》に対するに《食》をもってしたということと解しました。ただしこのままでは下七が字足らずなのと、上七の「白い」は言わずもがな、また「出す」にいささか散文的な印象がある点にそれぞれ補修を加えればよい付味が出ると判断して掲句の句形に一直を加えました。

ちなみに、初案の「ゆめひかり」という米の銘柄名が不審だったのでネットを検索してみたところ、これと名前のよく似た「ゆめぴりか」が網に掛かりました。「日本一おいしい米を」という北海道民の「夢」に《美しい》意を表す「ピリカ」を添えて名付けられた旨の解説がありました。ご当地にふさわしい句材なので、機に乗じてこれに改めたのですが、図らずも上下の句頭にユの同音の並ぶ表現効果も生まれました。

 五  七五三集へる人の賑やかに        女 初冬


五句目は臨時四飛び笑女さんの付番。冬を誘う趣の前句が折良く出たのでここはそれに乗じて冬季に移ることにします。人情句で行くならば「人情他」または「自他半」、「人情無し」で行くことも可能です。

呈示された5句の中から次の初案句に目が留まりました。
  七五三つ集いし人の賑やかに
前句との映りの良い付けです。なお「集いし」は現代語では「集まった」にあたりますが、その「た」は「過去」ではなく「完了(存続)」の意なので、それに相当する文語助動詞「り」を用いた掲句の句形にて治定としました。前句に籠もる《暖かさ》の要素が、和やかな集まりの雰囲気と響き合って付味の良さの感じられる五句目が生まれました。

 六   鎮守の森に潜むふくろう        山 三冬


六句目は臨時四飛び禿山氏の付番。もう一句冬を続けます。人情を入れるならば「人情自」以外、あるいは「人情無し」も可です。

候補5句の中から、前句に良く付いた掲句を初案のまま頂くことにしました。前句の「七五三」から「鎮守の森」への移り、さらにそこに住む「ふくろう」への連想の流れが自然で味の良い場の句です。前句までしばらく人情句が続いて、いささか凭(もた)れ気味を生じていた流れを場に転じて、新たな展開を招くにふさわしい六句目が生まれました。 (この項続く)
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