いわき文音五吟歌仙『粥の香に』の巻 解題01(発句から初折表折端まで)
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※画像は「大阪ガス/ Let’sガス火クッキング」より転載

興行発足以来足掛け10年に及ぶ歳月を閲した「いわき文音連句」、その通巻第二十三にあたる歌仙「『粥の香に』の巻」がこのたびめでたく満尾を迎えました。今回も一巻の進行状況を捌(さばき)役の宗海が解説を加えながら6回にわたって連載いたします。

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  いわき文音五吟歌仙「粥の香に」の巻      宗海捌
                        起首 2016.04.17
                        満尾 2016.07.06

 発句 粥の香に春の眠りを覚ましけり     宗海 三春
 脇   独活和え添えて床上げの膳      禿山 晩春
 第三 山笑ふ友の集へる故郷に        笑女 三春
 四   演歌の後は校歌朗誦         俊輔 雑
 五  夕暮れの川面に浮かぶ月赤し      遊糸 三秋/月
 折端  ちちろのすだく長屋門筋        海 三秋


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五吟による膝送りはこれが三度目ですが、従前の四吟歌仙に用いた二種の付順を交互に繰り返す膝送り方式に従うと、長句と短句の担当者が偏ってしまう欠点のあることに遅ればせながら気付きました。そこで今巻以降は別の膝送り方式に基づいて付け進めることにしました。

それは今巻について言えば、初・二巡目は a宗海>b禿山>c笑女>d俊輔>e遊糸、三・四巡目は b>a>d>c>e の付順を、それぞれ交互に二度ずつ繰り返しながら進めるという、変則的な五四三飛び方式に従うものです(eは毎回四飛び)。

この方式で進めると月花の配分は大体うまく行くのですが、匂いの花の担当者が月花両句を持つことになってしまうので、この点への配慮を払う必要があります。それについてはその時点で触れることにします。

 発句 粥の香に春の眠りを覚ましけり     宗海 三春


この巻では発句の付番が捌に回ってきました。この付合が始まる頃、札幌在住の禿山氏が入院され、連衆一同の気懸かりは一方ならぬものがありましたが、幸い大事には至らずに帰還され、付合にも参加が叶う幸運な展開になりました。そこでその慶事への祝意を籠めて、ご当人に成り代わって人情自句を浮かべました。
初案は「春眠を粥の香りに覚ましけり」でしたが、三春の漢語季語「春眠」よりも和語傍題「春の眠り」の柔らかさを佳しと判断して掲句の形に改めました。


 脇   独活和え添えて床上げの膳      禿山 晩春


脇は当の禿山氏が担当します。前句の言外に隠れたものを表に出して寄り添うように付けるのが上々の脇とされます。
呈示された候補5句の中から選んだのが上掲句。前句に籠もるめでたさの気分を「床上げ」によって具象化し、晩春の季語「独活和え」を用いて当季を定めたものです。初案上七末は「…添えた」でしたが、僅かなながら、ここを「添えて」に改めて格調を整えました。前句を病の癒えた人物と見定め、その朝餉の膳に焦点を当てた、発句に似合わしい付味の脇が生まれました。


 第三 山笑ふ友の集へる故郷に        笑女 三春


第三は一巻の転じが始まる大事な句所。ここを笑女さんに持って頂きます。春をもう一句続けることと、前二句に詠まれた世界から大きく離れること、さらに自らのこととして詠む人情自の句が続く状況からも離れるという配慮も必要な局面です。
呈示された候補5句の中で捌が目を留めたのが上掲句。禿山氏の片名俳号「山」が季語の中にさりげなく隠されています。初案は「故郷の集う仲間に山笑う」でしたが、この句形は平句体で第三の句体にはそぐわないため、これに一直を加えて治定としました。なお作者の心情には前二句の内容が投影されていますが、それは連衆にしか解らぬこと。見かけの上では前二句から大きく離れた転じ味の良い第三が生まれました。


 四   演歌の後は校歌朗誦         俊輔 雑


四句目は俊輔氏の付番。春(および秋)は三句以上五句まで続けるという「句数(くかず)」の制約が解けたのでここは雑で行くことにします。
呈示された候補5句の中から選んで治定したのが上掲句です。前句にまっすぐ続くという点にいささか親句の気味はあるものの、四句目らしい軽さで前句によく付いている点を評価して頂戴しました。初案は「みんないい子で校歌朗誦」でしたが、これに"逸らし"の要素を加えるためにカラオケの場景に付筋を改めたものです。前句に音曲の句材をあしらった軽妙な四句目が生まれました。


 五  夕暮れの川面に浮かぶ月赤し      遊糸 三秋/月


五句目はお待ち兼ねの遊糸さんに付番が回ってきました。ここは月の定座に当たる句所なので、秋の月を所望しました。
候補5句の中から選んで一直を加え頂戴したのが上掲句です。前句まで人情句が続いたのをさらりと流して場の句に転じたところがお手柄です。初案は「夕暮れの川に上るは赤き月」でしたが、「川に上るは」に前句「演歌の後は」と「は」の特立表現の重なりがある点と、「川」だけで済ませずに《水面》の要素も加えたい点に付け入る隙を見て取り、このように改めました。これまでの流れを変えて新たな展開が期待できる五句目が生まれました。


 折端  ちちろのすだく長屋門筋        海 三秋


これより膝送りは二巡目入り。前記のごとく同じ付順を再度繰り返すことになるので、折端は捌の付番になります。前句の場を武家屋敷町と見定め、その場景を同じ場の句で承けて、三秋の虫類季語「ちちろ」を詠み込んで秋を続けました。
(この項続く)
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